アクアフィリング(PAAG)豊胸について—いま分かっていること
2024.09.01 更新
カテゴリ:doctor-blog

結論
アクアフィリング(ポリアクリルアミド・ハイドロゲル=PAAG)を胸に注入する方法は、合併症が多く長期的な安全性が確認できないため、世界的に推奨されていません。 日本でも4学会の共同声明で「安全性が証明されるまで、非吸収性充填剤の豊胸は実施すべきでない」と明言されています。
なぜ問題視されているの?
アクアフィリングは体内で吸収されない“ゲル”です。注入直後は形が整って見えても、時間が経ってゲルが動く(移動する)、しこりや炎症・感染が起きる、思わぬ場所にたまる、取り除きにくい—といったトラブルが各国で報告されています。最新の症例報告でも、数年後に膿がたまり敗血症になった例や、腰や下腹部などへの遠隔移動が報告されています。
参考までに、アメリカFDAはフィラー(注入剤)を使った胸のボリュームアップを承認しておらず、推奨しないと明確に注意喚起しています。
また中国では2006年にPAAGの使用が禁止されました(多数の被害報告が背景)。
すでに注入している人は、取れるの?
取る(除去する)ことは可能です。 ただし、完全に取り切るのが難しいケースも多く、複数回の処置や段階的な手術が必要になることがあります。まずは画像検査(超音波やMRI)でゲルの広がりを確認し、切開して洗浄・可能な範囲で除去するのが一般的です。除去後、必要に応じて脂肪注入やシリコンインプラントによる再建を提案されることがあります。
これから検討している人へ
- おすすめできません。 日本の専門学会も上記のとおり慎重な立場です。
- 体のボリュームアップは、手術で確立された方法(インプラントや脂肪移植)を、経験のある医師と相談して選ぶのが安全です。
- FDAも、胸の増大目的にフィラーを使うことを認めていません。
症状がある・不安があるときは
美容外科/形成外科で、PAAGの除去経験がある医療機関に相談してください。受診の目安は、以下のようなサインです。
- 痛み・熱っぽさ・赤みが続く
- しこり、硬さ、左右差が強くなってきた
- 形が急に変わった、触ると液体が動く感じがする
これらのサインを放置すると感染が悪化し、全身状態が悪くなることもあります。
当クリニックでは、アクアフィリング除去に関するご相談も承っております。まずはお気軽にご相談ください。カウンセリングにて状態を拝見し、超音波検査などでゲルの状態を確認した上で、最適な除去方法やその後の治療計画をご提案いたします。
関連する記事
-
豊胸手術は傷跡が残る?ダウンタイムの短いおすすめの豊胸術も紹介!
2020.04.09 更新
美容施術を受けたいけど傷が残らないか心配という方が少なくないと思いますが、豊胸施術の場合も同じ悩みを持つ方が多いと思います。 ここでは、豊胸の際の...
-
2020.04.09 更新
ダウンタイムとは施術してから回復するまでの期間のことをいいます。 美容施術では、麻酔による腫れや手術に伴う腫れ、むくみ、ア...
-
2019.08.21 更新
ご質問者様:昨年にS美容外科で脂肪豊胸を受けた者です。 6ヶ月ほど前に他院で豊胸シリコンバック取り出しと同時にコンデンスリッチ脂肪豊胸手術を受けた...
-
2019.08.21 更新
ご質問者様: 初めまして。 この度、脂肪注入による豊胸術を希望しますので、幾つかご質問させて下さい。 現在40代半ばですが、20年ほど前に他院でシリコン...