シリコンゲルバッグ豊胸について
シリコンゲルバッグ豊胸について
シリコンゲルバッグ(シリコンバッグ)豊胸をお受けになるときに主治医としてはデメリットをしつこく被施術者(お客様)に申し上げることには消極的になります。ここではお客様からよく聞かれるデメリットについてお教えして、慎重に豊胸手術の選択をしていただきたいと思います。もっとも大事なことは以下のデメリットが手術同意書に書いてあるかということです。実際に聞かれる疑問についてお話しします。まず、シリコンゲルバッグ豊胸について説明します。図1Aでは手術を受けていない乳房の断面図を示しています。図5A、図5Bにシリコンゲルバッグによる豊胸を示します。図5Aは乳腺下法でシリコンゲルバッグを乳房に挿入した場合を示しています。シリコンゲルバッグ周囲に固い被膜が形成されます。またクーパー靭帯はおおよそ切断されますので、お乳が垂れる原因になります。また、シリコンゲルバッグは重力で下の方に下がりますから、乳房の下部の付け根あたりの皮膚が薄くなり、シリコンゲルバッグを簡単に触れるようになることがあります。図5Bは大胸筋下法によるシリコンゲルバッグ豊胸を示しています。おおよそ乳腺下法によるシリコンゲルバッグ豊胸と同じですが、クーパー靭帯は断裂しません。しかし、長年にわたりシリコンゲルバッグを挿入することで大胸筋が委縮したり、肋骨が圧迫され、骨折する可能性があります。
シリコンゲルバッグ豊胸についてのQ&A
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シリコンバッグ豊胸を考えていのですが、医師としてどんなデメリットを術前に話しておかなければならないと考えますか?
術後に生じるデメリットとして以下のことが挙げられます。
- ① 左右乳房の形に左右差が生じてしまう
- ② 体に合わない
- ③ バストが不自然である
- ④ 谷間ができない
- ⑤ リッピングができる
- ⑥ シリコンバッグがずれて変位してしまう
- ⑦ カプセル拘縮と石灰化が生じる
- ⑧ 脇の下、乳輪などに傷跡がついてしまう
- ⑨ 精神的ストレス
- ⑩ マンモグラフィーが受けられない
- ⑪ バッグが破損することがある
- ⑫ 周囲組織を圧迫してしまい、肋骨骨折の危険がある
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シリコン豊胸後にお乳に左右差が出てしまうってどういう事なのですか?
これは②の体に合わない、③のバストが不自然であると関係しますが、シリコンバッグではシリコンジェルが厚みのあるシリコンでできたバッグの中に入れられています。シリコンジェルは柔らかいのですが、バッグに入れられるとある程度の硬さを持つので、体の構造にある程度しかなじみません。シリコンバッグは工場で作られるので、オーダーメイドでなく、体に合わせて作られていません。したがって、シリコンバッグを挿入しても体に合わないことがあります。また、バッグですから、寝ても乳房は流れず、盛り上がったままです。谷間を作ろうとしてもある程度に硬く、バッグに入っているので内側に寄らず、谷間を自然な感じで作ることができません。
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そういうことなのですね。リッピングってどんなことですか?
バッグを入れるときに十分なスペースを作らず、無理やりシリコンバッグを乳腺の下に挿入すると、バッグが撚れてしわになり、外部からひだのように触れることです。また、挿入するスペースを作り過ぎると入れたシリコンバッグが移動してしまい、本来に意図した位置からずれてしまうこともあります。これが⑥のシリコンバッグがずれて変位してしまうことに相当します。
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石灰化って、ヒアルロン酸豊胸、脂肪豊胸でも聞きますが、シリコンバッグで起こる石灰化というのはどういうものですか?
シリコンバッグは生体にとって異物なので、異物を取り囲むように炎症が起こります。炎症の結果、細胞が死ぬとカルシウムと細胞成分が結合します。これが石灰化です。異物による炎症が周囲に及ぶと、炎症を広げないように繊維芽細胞が活性化して線維をつくり、シリコンバッグをとり囲みます。この線維性の構造物が被膜と呼ばれるものです。シリコンバッグのバッグの厚みが少ないと、またシリコンバッグが柔らかいと皮膜の厚さは薄くなりますが、シリコンバッグが硬いと、シリコンバッグの厚みが厚いと皮膜が厚くなります。被膜が薄ければ問題ないのですが、被膜を伸ばそうとする力が加わると、その力が大きければ大きいほど皮膜は厚くなり、硬くなり、被膜を守ろうとするため、被膜自体が収縮するようになります。これがカプセル拘縮です。これが起きると挿入したシリコンバッグを締め付けるので、シリコンバッグの形がはっきり外から判るようになってしまいます。
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カプセル拘縮というのはよくわかりましたが、どう防げばいいのですか?
根気よく乳房をマッサージして頂くしかないです。
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シリコン豊胸って皮膚に傷を残さず施術できないのですか?
そうですね。大胸筋下法、大胸筋筋膜下法、乳腺下法のどれでも皮膚に傷は残ります。
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先生は精神的ストレスがシリコンバッグ豊胸で発生すると言われていますが、どうしてストレスが生じるのでしょうか?
シリコンバッグは寝ても乳房が流れず、レントゲン検査でも映り、乳癌検診なども受けにくいので、シリコン豊胸を受けたことを自分だけの秘密にする傾向があり、誰かにばれないか、後ろめたさを感じることもあり、心に負担がかかります。シリコンバッグは胸に挿入されていても冷たく感じます。
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シリコンバッグを入れているとマンモグラフィーは受けられないのですか?
あまりお勧めしません、バッグが破裂することがあるからです。
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バッグは破損することがあると言われましたが、そんなことがあるんですか?
実際にあるようです。バッグが破裂するとシリコンバッグの中のジェルが周囲組織に漏れ出して炎症を起こします。すぐに摘出する必要があります。
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シリコンバッグの豊胸では効果が20年はもたないって聞きましたが本当ですか?
持つかもしれませんが、シリコンバッグ周囲の炎症がひどくなり、バッグも硬くなってくると思います。破損しやすくなるので、できれば10年くらいでバッグを取りだして、脂肪豊胸かほかの豊胸術でもう一度、豊胸されるのをお勧めします。というのは大胸筋下法でいれたシリコンバッグは周囲組織である肋骨を圧迫し、肋骨が細くなり、骨折することがあるからです。
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よくわかりました、シリコンバッグ豊胸から他の豊胸術に替える場合の注意点を教えてください。
他院でシリコンバッグを摘出して脂肪豊胸(脂肪幹細胞豊胸)を受けた方が、脂肪豊胸してから乳房が硬くなったと訴えて来院されました。訴えを聞いたとき、そんなことはないだろうと思い、その方の乳房を触診しました。びっくりしたのですが、その方の乳房は石のように固かったのです。シリコンバッグを摘出したときにシリコンバッグの周囲の被膜を除去せずに脂肪豊胸してしまったようです。被膜についていたカルシウムと脂肪細胞の脂肪が結合して、カルシウムの沈着が起こり、被膜が石灰化して、石のように固くなってしまったようです。これを治療するのは脂肪再生豊胸しかないかなぁと思い、脂肪再生豊胸を紹介しました。紹介後、被膜を摘出する手術を受け、脂肪再生豊胸を受けられたようです。その後、その方の乳房は元通り柔らかくなり、脂肪再生豊胸で乳房も豊胸されて、今は問題が何もないとお聞きしました。シリコンバッグを摘出し、脂肪豊胸を受けるときは被膜を摘出していただくことをお勧めします。
以上、シリコンバッグ豊胸のデメリットを簡単にお話ししましたが、さらに疑問がある場合はお答えしますのでお問い合わせください。